手作りのちくわぶ
ちくわぶ、名前からして麩の一種ではないか?というのはあながち間違いではありません。
あの独特の食感は小麦のグルテン(小麦の植物性たんぱく質)によるものです。
ただ、コシの強さが人気の川口屋のちくわぶはグルテンを添加しているわけではなく「練り」と「延ばし」、そして「巻き付け」でこれだけのコシを生み出しています。
使用する小麦粉は強力粉の〜強〜小麦粉の中でももっともグルテンを多く含んだ強力のなかの強力粉、これをつかっています。
ですが、この粉を使えば簡単にいくら煮ても煮崩れしないちくわぶができるわけではなく、むしろ普通の粉よりクセもつよい分、扱いがとても難しくなってきます、それを克服できるのが唯一「人の手」職人の技術です。
まず「練り」です。
〜強〜を水と少量の塩を加え徹底的に練りあげます、塩には小麦粉中のグルテンを引き出し生地組織を強化し、茹であげた後に残る少量の塩が食味をひきたてるなど、とても大切な役目があります。
塩を加えないとあらゆる意味で間の抜けたちくわぶになってしまいます、人間が生きる為に必要な塩はやはりちくわぶにも必要なのです。
この水と塩と小麦のベストバランスは日々違います、それを見極めるには長年培った職人の勘が必要です。

練りが終わった生地は切り分けられて、一つ一つロールを使ってなんども引き延ばされます。
延ばしを繰り返すことでグルテンがまんべんなく結合されていきます。
ちくわぶ延ばし
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延ばした生地はしばらくねかし、生地の組織を安定させます。
その後、「巻き付け」を行います。

川口屋ではもはや骨董品と呼べるような無骨な機械を使い、羅宇(らう)と呼ぶステンレスの管に一本一本巻いていきます。
手巻きちくわぶ この巻き機、無骨で古いものだけに、安定して巻くにはかなりの熟練を必要とします、扱いに慣れていないものが使うとすぐに機嫌を損ねまったく巻けなくなってしまうのです。

熟練された職人の手により羅宇に巻きつけられる生地は約2回転半。
この2回転半の巻き付けによってグルテンの構造を格子状にし煮崩れしなくなり、その上長時間煮込むとコシを維持したまま巻き付けた接合部からほぐしやすくなる理想のちくわぶになるのです。
生地自体もロールで何度も引き伸ばし重ねて作るので、薄い生地が重なっている状態になっています。
川口屋のちくわぶの断面をよ〜くみると、バームクーヘンのように細かい層になっています。
これは生地と巻きのコンビネーションによって、生まれるのです。
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巻き付けができたら、型に入れ25分間茹でます。


独特のデザインはこの型によって作られます。

いつからこのデザインだったのか?そもそもちくわぶはいつから存在していたのか?というのは実はよくわかっていません。
大正初期に東京の蒟蒻屋が生麩の製法をもとに小麦粉と生麩を加えてつくった、とか、はたまた江戸時代にはすでに存在していたなど、諸説がありますがはっきりせず、形についても同じで随分昔からこの形だったくらいしかわからないのです。


この「茹で」では大きな釜で高温で行う為、高温の蒸気があたりに充満し工場内部の温度と湿度を上げ、すぐに工場内部は過酷な環境へと変わります。
特に夏場の暑さは半端ではありません、もはや汗なのか蒸気なのかわからないような中で作業をします。
茹であがったちくわぶは熱いうちに型から取り出し、羅宇を抜く作業をします。
熱いうちでなければ、型や羅宇が生地に張り付いてしまいせっかくのデザインを壊す事になるからです。
茹であがったばかりの熱いちくわぶを、これまた古い機械を使い手作業で羅宇を抜いていきます。
ちくわぶ茹で ちくわぶ羅宇抜き
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抜きが終わるといよいよ完成!といきたいところですがそうはいきません。
形はちくわぶですが、この時点ではものすごく固いのです。

包装されたちくわぶしか触ったことのない方は、ちくわぶは元々固いものだと思っている事が多いですが、包装されたものが固いのは鏡餅などと同じ事で、柔らかいものが時間とともに固くなってしまっただけで本来のちくわぶは柔らかい物なのです。
最近ではあまり見かけませんが、ちくわぶをハダカで売っていることがあります、そのちくわぶは本来の柔らかさをしているはずです。

抜きたてのちくわぶに話を戻します。
抜きたてのちくわぶの固さというのは包装されたちくわぶの固さとは別物で、これは今まで徹底して作り上げたコシによるものです。
川口屋のちくわぶのコシは半端ではないのでこの段階では噛み切るのが大変なくらい固いです、この固いちくわぶを柔らかくするのに水を吸わせて「伸ばし」ます。

この伸ばしでも川口屋はこだわります。
川口屋は単に伸ばすだけではなく熟成ともいえる工程なので時間をかけてじっくり行うのです。
このじっくりと時間をかけて伸ばすことが川口屋のちくわぶの最高のコシを生かします。
ちくわぶ伸ばし 伸ばしというのは時間をかけるほど非効率であり、無ければ無いほど生産サイクルを回せるので、量を作る為に伸ばしの時間を短くしたり、もしくは伸ばしをせずに作られる事が普通です。
しかしこの伸ばしを丁寧にしなければ本当のちくわぶには成りえないと川口屋は考えます。

徹底的に鍛えあげたコシをじっくりと時間をかけて伸ばす、これは口で言うほど簡単な事ではありません。
外気温と水温、水質、それからちくわぶの温度など、完璧な管理ができなければいけません、時には氷水にちくわぶを浸けて冷やす事もあります、素手で浸けていくのでとても大変な作業です。
ちくわぶ冷やし
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伸ばしが終わると、ついにちくわぶの完成です。

一部はこのハダカの状態で販売しますが、その他のほとんどは真空包装にします。
川口屋の真空包装は完全な真空ではなく半真空という方法で包装しています、完全真空ではちくわぶがペッタンコになってしまうのに対し、半真空品はちくわぶの形が保たれるのが特徴です。
ちくわぶの形がそのまま残る事で煮たときの味染みが良くなるのです。
それになにより、あの形を潰してしまうのはもったいないですよね。
ちくわぶ発送 半真空包装されたちくわぶは殺菌の為90℃で30分間ボイルします。
ボイルが終わると冷却され、そして皆様の食卓へ届けられます。

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